MAJORA CANAMUS.

ヘンデル「メサイア」への想いを、台本と楽譜をもとに語ります

No.1 序曲 (3)

 序曲は付点が特徴的な導入部、中間部のフーガ、そして終止部からなる。導入部は、前述のように上昇傾向の音形であるが、心からの喜びというより、心の嘆き、叫びを底から絞り出す、あるいは厳しく叱責しているかのようである。

 これに対して中間部のフーガの出だしの主題は下降気味の音形で、何かを語り、諭すようなイメージである(下図)。音形は前方を向いているようでもあり、次曲以降を見据えているようでもある。

 この主題は、Violino 1 & Oboe 1 → Violino 2 & Oboe 2 → Basso continuo に引き継がれていく。4声部であるのに主題は3回だけ繰り返される。violaには主題が割り当てられていない。宗教曲での「3」が持つ特別の意味合いがあるのかも知れないが、ヘンデルが知るのみである。

序曲フーガ部 主題

 さて、このフーガ部、この後次々と各部が対話するような構成が終止部まで続く。この対話は、いったい何を表現しているのだろうか。