MAJORA CANAMUS.

ヘンデル「メサイア」への想いを、台本と楽譜をもとに語ります

牧歌第4歌

 メサイアが1743年にロンドンにて最初に演奏された際に、聴衆の手元にあった歌詞冊子(ワードブック)の表紙に書かれていたウェルギリウス『牧歌』第4歌は、紀元前40年頃に創作されたと思われるもので、キリストの出現を予言した歌とみなされた、牧歌としては特異な作品だそうである1)。

 ジェネンズがこの牧歌の冒頭の句を、ワードブックの表紙にあえて記載した意図は、ワードブックに続けて書かれた聖句(テモテへの第一の手紙第3章16節、コロサイ人への手紙第2章3節)に表れていると思われる。ジェネンズがメサイアのために選択した聖句は、牧歌に続けて書かれたこの聖句を具体的に示したものと言える。

 次は第1部の聖句について考えてみたい。

1) ウェルギリウス「牧歌/農耕詩」(小川正廣訳、2004年、京都大学学術出版会)