MAJORA CANAMUS.

ヘンデル「メサイア」への想いを、台本と楽譜をもとに語ります

No.1 序曲 (2)

 序曲の導入部の最初は以下のような主題から始まる。

 しかし、原譜の付点リズムは、複付点と16分音符の組み合わせであることが広く認められており、しかもスコアによっては、下記のように休符を組み合わせた鋭い切りと音形をイメージしている場合もある*1

 このような楽譜から奏でられる音楽は、「鋭い苦しみ」をイメージさせる。まるで十字架(人の罪)を背負ったイエス・キリストの重い足取りのようである。特に2小節から3小節にかけての通奏低音の飛躍とトリルは、まるで心の震えを表現しているかのようである。

 Graveで指定されている導入部は、Graveの持つ「荘厳」なイメージというより、文字通り重々しい歩みなのである。

*1:Novello Publishing Limited, Full Score. なお、以降小節番号は原則、上記のスコアに従うものとする。