序曲の導入部の最初は以下のような主題から始まる。
しかし、原譜の付点リズムは、複付点と16分音符の組み合わせであることが広く認められており、しかもスコアによっては、下記のように休符を組み合わせた鋭い切りと音形をイメージしている場合もある*1。
このような楽譜から奏でられる音楽は、「鋭い苦しみ」をイメージさせる。まるで十字架(人の罪)を背負ったイエス・キリストの重い足取りのようである。特に2小節から3小節にかけての通奏低音の飛躍とトリルは、まるで心の震えを表現しているかのようである。
Graveで指定されている導入部は、Graveの持つ「荘厳」なイメージというより、文字通り重々しい歩みなのである。
*1:Novello Publishing Limited, Full Score. なお、以降小節番号は原則、上記のスコアに従うものとする。