MAJORA CANAMUS.

ヘンデル「メサイア」への想いを、台本と楽譜をもとに語ります

イザヤ書のこと

 メサイアの第1部・第1場の歌詞は預言書のイザヤ書から選ばれている。アブラハムの契約、シナイの契約でのイスラエルの民の特権と責務、そしてその民の背信に対する裁きである捕囚、そして捕囚の民に対する慰めのメッセージと帰還。

 これらは、イザヤ書の預言は成就されたのだということを聴き手に再認識させると同時に、イザヤ書の中にキリストを想起させることも意識しての歌詞の選択であろう。すなわち、イザヤ書40.3の「主の道を用意し、主の通られる道をまっすぐにせよ」という聖句は、マタイ3.3の荒野から出現し、主の到来、イエスの降臨を告げる洗礼者のヨハネを見ることができる。

 ジェネンズは、旧約聖書の預言は確実に成就したことを示したかったのであるし、信仰の根源をもう一度、明言したかったのかも知れない。

 ジェネンズの選択した聖句を第3曲で、ヘンデルは音楽で非常に具象的に表現した。